VOICE ドクター・
専門家の声

【Vol.3】水素と酸化ストレスの関係

2023-03-08

「水素が酸化ストレスを制御する」

水素ガス吸入機を活用する医師や研究者にお話しをお伺いする「ドクターズインタビュー」。
第3回は、山梨学院大学で水素吸入の研究を行う、小山勝弘教授にインタビューをしました。
(取材日2021年8月)

ドクタープロフィール

山梨学院大学スポーツ科学部
小山勝弘 教授

国際水素医科学研究会理事

ドクターズインタビュー

小山先生が水素研究を始めたきっかけは何ですか?

バルセロナオリンピックを前にした合宿で、柔道日本代表選手の一人が疲労回復のために水を電解する機器を持ってきていたのです。当時、合宿に参加されていた医科学委員の先生から、なぜ電気分解をした水(電解水)を飲むことが、疲労回復につながるのか調べてほしいと言われて、研究が始まりました。
水を電気分解すると陰極側に水素が発生します。発生した水素分子は溶けるので、水素分子の濃度の高い水(=水素水)ができます。そこで、電解水の生理作用は水の中に溶けている水素がもたらしている可能性がある、という仮説を抱くようになって、水素研究を始めました。

実際にその研究をされたのはどういった内容から始められたのですか?

まずは、人に対する水素水の研究に着手しました。私はスポーツ医学・生理学を専門分野としていますので、激しい高強度の運動をすると、体内で多くの活性酸素種が発生することを知っていました。そこで活性酸素種を大量発生させて酸化ストレスを増大させる実験デザインを構築し、水素水の影響を検討しました。具体的には、激しい運動を実施する前の2週間、毎日水素水を飲ませると(0.9L/日)、運動に伴う酸化ストレスを抑制する効果があるのかを調べました。
比較のために水素水を飲むグループと、飲まないグループの2つを用意し、ランダム化比較試験(RCT)を行いました。結果ですが、細胞内のDNAが酸化ストレスを受けて生じる物質(8-OHdG)の値が、水素水を飲用していたグループでは飲まなかったグループに比べて大きく低下しました。つまり、酸化が抑制されているということがわかったのです。
次に動物モデル、ラットを使った研究を行いました。酸化ストレスと筋の萎縮の関係性についての研究でした。筋肉の萎縮が問題になるケースは高齢者に多いのですが、加齢性の筋萎縮であるサルコペニア、あるいはサルコペニアに起因するフレイルといった症状が代表的です。
現在、日本の要介護・支援の対象になる方の40%弱が、運動器のトラブルを原因にしており、そのほとんどは、筋の萎縮に基づいています。若い時には気づきにくいのですが、筋肉量が減ると、出せる力(筋力)が弱くなり、最終的には日常生活の行動にも支障が出て、要介護・支援になってしまうことが分かってきました。元気で長生き、つまり寿命と健康寿命の差を縮めて健康長寿を全うするには、筋肉の萎縮を防ぐ対策が重要であると言えます。
しかし、筋肉の萎縮がどのようにして起こるのか、実は、このメカニズムは未だよくわかってないんです。ただ、筋肉の細胞の中でタンパクが崩壊する、分解されていく、そのきっかけを作っているのが、酸化ストレスだと考えられています。だからもし、水素が抗酸化的に働いて、酸化ストレスによるタンパク質の崩壊をブロックしてくれるのであれば、それは、社会にとってもインパクトの大きい成果になると思い、筋の萎縮を取り上げたのです。
この研究ではやはり、水素には一定の割合で筋肉の萎縮を抑制する効果があることが示されました。筋の萎縮を防ぐには、運動することが一番効果的であることはわかっていますが、世の中には、動けない方も多くいらっしゃいます。そういった方が、日常の生活の中で飲用している水を水素水に変えるだけで、筋肉量を維持できるようになれば、社会的にも非常に価値があるだろうと思いますね。
この他にもアルツハイマー型認知症やがんのモデルのラットを使った研究も実施しましたが、残念ながら、はっきりとした成果にはつながりませんでした。これらの疾患にも酸化ストレスが大きく関与していることが知られており、水素分子が予防改善効果を持つという仮説が世界中で示されつつあります。基礎的な研究を重ねていき、水素の作用メカニズムが解明されると、一気に水素研究が発展すると思います。

水素は経皮吸収できるのでしょうか?

経皮吸収を念頭にした研究は、過去に2つの方法でなされています。
一つは、入浴時の吸収を想定します。浴槽の水の中にマグネシウムを入れ、水素分子を発生させ、お風呂の水を水素水にします。その浴槽に浸かって入浴すると、呼気中の水素濃度が上がるというデータがあります。私も同様の実験をしてみましたが、確かに入浴すると呼気中の水素濃度は上がりました。しかしこれは浴室内に充満した空気中の水素ガスを吸入したのか、入浴で皮膚を介して水素が吸収されたのかはわからず、経皮吸収を証明することは難しいと感じています。水素入浴剤として商品化されているものが、こういった機序によるものですね。
もう一つの方法は、サウナボックスのような箱の中に水素発生装置を置き、内部を水素ガスで充満させる試みがあります。この方法では、ボックス内に座り、首だけを外に出し、首から下の身体の皮膚から水素を吸収させようとするものです。専用のマスクをつけて、吸入する空気は、全て別の部屋から取り込むようにして、ボックスの内部に充満した空気は吸入できない条件を作りました。その結果は非常に驚くべきもので、僅かではありますが呼気中の水素濃度が上昇し、水素分子が経皮的に吸収される可能性を否定できないものとなりました。

水素吸入の研究については?

当時在職していた山梨大学で、基礎研究として2つの研究を行いました。
一つは、経鼻的に水素ガスを吸入した時に、体温、血圧、心拍数、動脈血酸素飽和度などの生理指標が、どのように変動をするか検討する研究です。この研究は安静状態で水素ガス吸入をするという単純なデザインですが、少し手の込んだ仕掛けをしました。吸入する水素ガスを発生させる本物の水素発生装置と、ただの大気を発生させるダミーの水素発生装置(外見は同じ)を用意して、検証したのです。このことにより、実験者と被験者の双方が、どちらのガスを吸入しているかが全く分からないままに研究を進めるという、いわゆるダブルブラインド法による検討ができました。
結果は、対象とした測定指標に関して、ネガティブな作用は全く観察されず、60分間の水素ガス吸入による急性影響として特段の問題は生じないという結論に至りました。
その際、心拍変動から自律神経活動の推移も測定したのですが、吸入30分間で、副交感神経活動が優位になっているということがわかりました。水素ガスを吸入すると眠くなるとの感想が多く聞かれますが、このことが影響しているのかも知れません。さらに水素を1時間吸入した後、別室(通常の大気を吸入)で1時間安静にして呼気中の水素濃度を継時的に測定しました。それまでの先行研究からは、水素を何らかの方法で体内に吸収させても、通常は吸入後に速やかに呼気中水素濃度がゼロになるとされていました。しかしこの研究では、本物の水素発生装置を利用した被験者からは、水素ガス吸入終了後1時間経過しても、呼気には高濃度の水素が検出されました。そしてこの現象は、全ての被験者で同様に認められました。私を含めて研究室メンバーも結果に驚きましたが、このような新しいデータが示せたことは、非常に有意義でしたね。
二つ目は、8名の学生にトレッドミルランニングやスクワットジャンプなど、かなり強度の高い運動負荷をかけて酸化ストレスを意図的に増やし、その後、60分間の水素吸入をすると、酸化ストレスの上昇度を抑制できるかどうかという研究です。簡単に言えば、運動後の水素吸入によるリカバリー促進効果は期待できるかという研究です。こちらも一つ目の研究と同様に、ダブルブラインド方を採用して、厳密に検証しました。
結果ですが、運動後に水素吸入を行った条件では、大気吸入条件と比べて、酸化ストレスマーカーの増大が顕著に抑制されました。つまり、激しい運動後に生じる酸化ストレスは、運動後の回復過程で水素ガスを吸入することで抑制され、その後の運動パフォーマンスの回復に寄与する可能性が示されました。これらの結果は、論文として、2020年12月にMedicalGasResearch(doi:10.4103/2045-9912.304222)に掲載されています。

今後水素を使って、どのような研究が必要だと思われますか?

水素吸入の研究では、吸入するガス中の水素濃度を変えた研究、つまり体内に取り込む水素量の多寡が身体へ及ぼす影響について調べたいと思っています。これまでにも水素の生体内作用を標榜する多くの研究がありますが、この検討によって体内に吸収する水素量と発現する作用との関係が明らかになり、水素分子の真の作用機序解明に近づけると思っています。
また身体の中で何が起きているかを細胞レベルで調べるためには、動物試験を採用する必要があります。水素吸入の研究、特に経鼻的吸入の検証は、これまでに動物モデルでほとんど行われていません。技術的なハードルはありますが、細胞や組織レベルでどのようなことが起きているのか丁寧に検討していく必要があると思いますので、挑戦していきたいと思います。

水素の可能性を聞かせて下さい。

水素は東京2020オリンピックでも聖火の燃料として使用されていましたし、選手村の電気も水素エネルギーです。エネルギーや環境問題として、世界中が水素に注目しています。我々は生体に作用する水素、健康作りに寄与する水素を検討している訳ですが、「水素」というキーワードが、環境と健康の双方に希望もたらすものになる可能性があると思うと、何だかワクワクしませんか。我々の細胞内のミトコンドリアで、生きるためのエネルギーをつくるプロセスでは、水素が最大限活用されているのは間違いない事実ですから、環境つくりと共に健康つくりにも貢献する水素がますます注目されていく社会になると思います。正にSuisocietyの到来ですね。

小山教授、ありがとうございました!

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